Alva Skog 氏は、飾らない人柄が魅力の、スウェーデンに拠点を置く評価の高いイラストレータです。その独特な作品を通じて、性同一性や、ジェンダーの視点、ジェンダー不平等といった概念を、大胆な批判的・商業的魅力を失わない巧みな方法で表現し、疑問を投げかけています。 自身の作品が The Guardian 紙や The New York Times 紙に掲載された以外にも、Apple や Coke、WeTransfer をはじめとする数々の企業の仕事を手掛けてきました。
Alva Skog 氏の作品を知らない人でも、おそらくインターネット上や出版物、街の一角ですでに目にしたことがあるでしょう。作品の力強く際立つ原色づかいと、遠近感をゆがませたキャラクターの取り合わせが瞬時に人々の心を捉え、一目で誰の作品かがわかります。その視覚に訴える巧みなストーリーテリングと、フェミニズムや、性同一性、ジェンダー平等といったテーマから、Alva は社会の既成概念に挑む新世代のイラストレータの注目を集めています。
2018 年にロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ校を卒業して以来、プロとして、また一個人として、恐るべき数の作品群を創り出す多忙な日々を送ってきました。今回、ひっぱりだこの Alva を始業前につかまえて、運よくお話を伺うことができました。「朝が好きなので、早起きするのはとても気持ちがいいです。コロナ禍が始まってから、スウェーデンのストックホルムを拠点に活動しています。ロンドンに 5 年間いましたが、パンデミックの間に家族や学校に近いスウェーデンに戻ってきたのです。学士を取得した後、学生なら得られるコミュニティの感覚がとても恋しくなり、どうしてももう一度味わいたいと思うようになりました。そのため、ビジュアルコミュニケーションの修士課程で勉強を始めたのです。」
父親に勧められ絵を描くことが好きになったのは、幼い頃でした。しかし、その家族の腕前を超えるまでに長くはかからなかったといいます。「多くの人がそうだと思いますが、絵を描き始めたのはとても小さな頃です。いつも絵を描いていました。父と私がよく描いたのはスキー場で、ゲレンデのあちこちで小さなイベントが行われている様子でした。父はあの頃が自分のピークだったと言っていました。人物に影をつけることができたから。その後、私が影をつけ始めるようになると、もう父から教えてもらえることはなくなりました(笑)。十代の頃は漫画もたくさん描きました。漫画が大好きで、今もそれは変わりません。私の現在の作品はその影響を受けています。」
卒業してから Alva の作品が注目されるまでに時間はかからなかったとはいえ、クリエイティブな職業の例に漏れず、すべてにおいて順風満帆だったわけではありません。アニメーション業界に参入しようとする初期の試みが行き詰まったことで、Alva は「契約、報酬、ライセンスなどの手続き」を任せられるイラストレーション専門の代理人を探しました。そのなかで手を差し伸べたのが、現在の代理人である Jelly です。そこから実りの多い協力関係が生まれました。Jelly と Alva は、通常のアーティストと代理人の間にある仕事上の関係よりもはるかに深いつながりを持つ、絶好のパートナーであることは明らかです。「すばらしい代理人で、大きな支えになってくれています。活動を始めた当時から一緒なので、その存在なしにやっていくことなど考えられないという気持ちです。とても優しくて親しみやすい人です。」
「それと、かなり早い段階で皆さんから仕事のご依頼をいただけるようになったのも嬉しかったですね。代理人と契約したことで、プロ意識が芽生えました。仕事のできる人間、締め切りを守る人間として認めてもらえたからです。」優れた代理人とチームを組んだことだけが、Alva のキャリアを前進させた理由ではありません。学生として多数出品したハードに攻めた作品群も、その商業作品の高いクオリティと並んで、Alva が大勢から抜きん出た理由の 1 つでした。「学生の間にたくさんのコンテストに出品してきたことで、作品を知ってもらうことができました。また、国際女性デーに『It's Nice That』という Web サイトで私の作品が取り上げられたことも、フリーランスの仕事に大きくつながりました。たとえば、The Guardian 紙から初めて依頼を受けたきっかけもそれでした。」
Alva のサクセスストーリーのパズルを埋めるもう 1 ピースは、一目で誰の作品かがわかる、独特のイラストレーションスタイルです。「このスタイルは徐々に進化させてきたもので、今も大きな発展途上にあります。それはジェンダー規範を壊し、多様な表現を生み出したいという気持ちから来るのだと思います。それに、自分がイラストレーションというジャンルで大きな役割を果たしていることも自覚しています。多くの人々が多様な表現や、大きなボディパーツ、力強い色調、そして何よりも、フェミニストのメッセージに取り組んでいる姿を見ることができ、とても感激しています。とはいえ、これからも進化し続け、自分の関心に忠実でいるつもりです。誰もが常に自分の関心の影響を受けていると思っています。たとえば今、私にとっての関心事は、フェミニストを題材にしたさまざまな SF です。お気に入りは、Marge Piercy の『Woman on the Edge of Time』。なので、私の作品のキャラクターはじきに宇宙へと飛び出すかもしれません。」
ゆがんだ不自然な遠近感を採用した Alva の作品は、見る人を常ならぬ場所や状況へと導くため、ただ眺めているだけでなく、イラストレーションの世界に紛れ込んだかのような強い感覚に襲われます。「遠近法は、私が描く女性のキャラクターやノンバイナリーのキャラクターに力を与えるためのツールとして取り入れたのが最初です。そこから、私の作品で多用するメソッドへと進化しました。ディストーション (Procreate の機能) は私のお気に入りです。いつも、遠近法でどんな効果が得られるかつかめていない段階で、イメージをディストーションでゆがませてから押したり引っ張ったりしてみることで、(遠近法を) 実際に試すことができます。いろいろなものに遠近法を適用できる可能性に気付いたのです。見る人がキャラクターとの関係でどの立ち位置にいるかで、実に多彩な感情を伝えることができます。だから、遠近法を利用して私が伝えようとしているメッセージをいかに強調できるかを試すのは、とても楽しい作業です。」
多くのイラストレータと同様に、Alva もさまざまなプロジェクトに携わっていますが、好きな仕事のタイプは、ほとんどのイラストレータがたいてい優先順位の最下位に置くようなものです。「締め切りが短い社説の仕事が好きです。とにかく最初にひらめいたアイデアで制作を進める必要があるので、長期のプロジェクトでなりがちな、考えすぎるという状態にならずにすみます。それに経験上、社説のプロセスはいつも非常にスムーズです。これまでにご一緒したアートディレクタに恵まれていたのかもしれませんが、私が気付かない点に気付いてくれる優れたアートディレクタとの共同作業も楽しんでいます。たとえばアイデアのラフ画を送ると、1 枚選んで、要素を足したり引いたりする提案をしていただくこともあります。いつも非常に的確 (な提案) です。皆さんとても経験豊富なので、一緒にお仕事できて光栄です。」
「社説プロジェクトと、もっと長期の商業プロジェクトを比べるなら、社説プロジェクトに惹かれます。期間がとても短いので、それほど長く世の中に留まることがないためです。それは、私にとってより自由度が高いと感じる点です。商業プロジェクトでは、作品が 1 年以上にわたって使用される場合もあります。そうすると、すべてを完璧に調整することが求められ、非常に細かい点にまで目が配られます。社説プロジェクトのほうは、もっとこう『とにかくやってみて』という感じで最後まで進み、その後すぐに世の中に出回ります。新聞で直接目にする、その達成感は格別です。」
多くの場合、社説のイラストレーションには物語性の強いアイデアが必要で、Alva はそのアイデアを自身の作品に落とし込むのを得意としています。そのようなアイデアを思い付き、うまく視覚的に具現化するには、人間の状態に対する鋭い洞察と理解が求められます。Alva は次のように説明します。「それらのアイデアを何度も人々に語ることが必要だと考えています。妹や、父、母、あるいはクラスメートや友人など、周りの人に話します。次に、いくつもの簡単なスケッチを手早く描きます。アイデアに基づく小さなスケッチのようなものです。その中から気に入ったものを 2~3 個選んで、案を詰めていきます。通常、スケッチを始めた段階で、うまくいくかどうかすぐにわかります。」
私にとって重要なのは、まず本当に小さな小さな絵をいくつも描いていくことです。というのも、それは見た目の問題ではないからです。もっとこう、その感情や課題、キャラクターを伝えるものであるかがポイントになります。
「その大部分は直感ですが、自分の直感にはおそらく何らかの根拠があるはずだということも知っています。私は絶えず自分の直感の根拠が何かを明らかにしようとします。作品を生み出したり、特定のことを伝えたりするには、その過程で参考にしたもの、インスピレーション、あるいはアイデアが必ずあるためです。アイデアについて人に語ることで、アイデアを発展させているとも思います。また社説の場合なら、その論説を何度か読み返し、内容にアンダーラインを引いて、記事の余白部分に絵を描きます。でも、私にとって重要なのは、まず本当に小さな小さな絵を描くことだと思います。というのも、それは見た目の問題ではないからです。もっとこう、その感情や課題、キャラクターを伝えるものであるかがポイントになります。」
キャリアの早い段階で非常に多くのことを成し遂げた人は、次の大きな課題を懸命に見つけようとする自分自身を受け入れられるのかもしれません。しかし Alva が描く今後のステップは、当社の想像が及ぶレベルをさらに超えた野心的なものでした。「今私が実際に取り組んでいるのは、グラフィックノベルです。ビジュアルコミュニケーションの修士課程の一環なので、さまざまなフィードバックや技術的なアドバイスをもらうことができ、とても刺激的です。白黒の作品にするつもりで、その本文も手掛ける予定です。とはいえ、文字はあまり使わないと思います。私にはイメージを通じて伝えるグラフィックノベルが提供できるからです。」非常にダイナミックなアートスタイルを持つ、自然体の、視覚に訴えるストーリーテラーとして、これ以上にもっともな考えはないでしょう。これほどの意欲と才能を秘めた Alva なら、そのアーティスティックな手腕をほぼあらゆることに生かし、成功できるはずです。今後もさらに多くの作品が見られることを楽しみにするとともに、そのグラフィックノベルでひとコマひとコマに浸れる日が待ち遠しくてしかたありません。
Alva が手掛けたその他のエネルギッシュで不思議な作品は、Instagram、Behance、および Alva 自身の Webサイトで見ることができます。